Warriors Effect


リーグ最高の3PTシュート成功率とリーグ2位の3PTシュート成功数に加えて、リーグ最速のポゼッションペース(48分あたりの攻撃回数)とリーグ最強のディフェンス効率(100ポゼッションあたりの平均失点)を両立することで優勝したゴールデンステイト・ウォリアーズは、2015-16年NBAシーズンに多大な影響を与えている。その結果が開幕24連勝であるとも言えるため、NBAの試合が昨季と比べてどのように変化したのか、数字をもとに分析してみたい。

まずはポゼッションペース。昨季、平均100回以上のポゼッションペースを記録したチームはウォリアーズのみだった。一方、今季は12月16日時点(以下同)でそれが6チームへと増えている。また逆に、昨季のポゼッションペースが平均95回未満だったのはユタ・ジャズを筆頭に7チーム。そして、今季はジャズだけである。

続いて3PTシュート。昨季、3PTシュート数の比重が30%以上だったのは8チーム、25%未満が11チーム。今季は30%以上が10チーム、25%未満は6チーム。つまり、リーグ全体が試合のペースを上げつつ、3PTシュートを多投し、ウォリアーズのバスケットボールに追従しているのだ。

3つ目の数字はディフェンス効率。昨季、100ポゼッションあたりの平均失点が100未満だったチームは上から順にウォリアーズ、ミルウォーキー・バックス、サンアントニオ・スパーズ、メンフィス・グリズリーズ。一方、今季は12チームにも及ぶ。

まとめると、ハイペースと3PTシュートでオフェンシブになるはずが、リーグ全体ではディフェンシブという結果に。これは、ウォリアーズに追従したチームやそれに乗り遅れたチームが馴染めず、効率の悪いオフェンスを展開しているためかもしれない。

たとえば、昨季イースト首位だったアトランタ・ホークスに注目してみよう。26試合を終えた時点での成績は昨季が19勝7敗、今季は14勝12敗。それぞれのショットチャートを比べると、ロング2PTシュートよりも3PTシュートを重視した戦略が上手く機能していない様子だ。こうした機能不全が今季の混戦ムードを生み出した可能性もあるだろう。


ホークスの例とは正反対に、ハイペースな展開を使いこなしているチームも存在する。その代表がボストン・セルティックス、シカゴ・ブルズ、インディアナ・ペイサーズだ。とくにセルティックスのポゼッションペースは今季、リーグ4位の平均101.03回、ディフェンス効率が同じくリーグ4位の97.8失点。これはちょうどウォリアーズのそれと同じ水準である。

注目すべきは昨季のオールスター以降、セルティックスがすでに強固なディフェンスを完成させていたこと。昨季後半を20勝11敗と圧倒し、カンファレンス7位でプレイオフ進出を決め、今季に向けて準備万端だった。実際、チーム公式の特番に出演した Amir Johnson と Jonas Jerebko のコメントからもディフェンス意識の高さが伝わってくる。

・Amir Johnson が解説するピック&ロール時のディフェンス

・Jonas Jerebko が解説するセカンドユニットのスモールボールディフェンス

最後に興味深い数字を紹介しよう。ハイペース、高確率3PTシュート、高効率ディフェンスをバランスよく実現したチームはウォリアーズが最初ではない。マイアミ・ヒートとの2年連続ファイナルで優勝を果たしたスパーズこそが実は先駆者なのだ。たとえば、2012-13年シーズンの彼らはリーグ6位のポゼッションペース、リーグ3位のディフェンス効率、リーグ4位の3PTシュート成功率を記録した。

そのスパーズが今季、流れに逆らうかのごとくポゼッションペースを相対的に下げ、92.0失点という驚異的なディフェンス効率を叩き出している。また、3PTシュートの比重がリーグ5位の少なさでありながら、オフェンス効率はリーグ3位。あくまで想像になるが、ウォリアーズを倒すにはその戦略を追っても手遅れであり、正反対な戦略に答えを見出そうとしているのではないだろうか。


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