He was like us: DeMar DeRozan


トロント地元紙の記者、Doug Smith 氏が綴った DeMar DeRozan への想いを翻訳。

DeMar のトレードはなぜこんなにイライラさせるのか。この若者への溢れ出る敬意や称賛が物語るものは何か。トロント・ラプターズの歴史でこれほど、敬意と称賛の言葉が普遍的に当てはまる出来事はほかに思い出せない。

彼は私たちと対等だった。

ここで言う「私たち」とはよくあるものではなく、もっと大きな意味だ。みんなが熱望し、尊重するそれだ。

彼は極めて普通の人間。うぬぼれ屋ではなく、自己中心的でもない。自分よりチームや他人のことを優先する。彼が会話の中で「オレ」や「わたし」と表現することはほとんどなかった。いつも「オレたち」「私たち」であり、チームだった。

称賛に値する。

バスケットボールという枠を超えて彼をひいきしていることはまず宣言しておこう。

彼の9年間を毎日、追ってきたからかもしれない。恥ずかしがり屋だった10代の頃から、自信に満ちた男へと成長する過程を見てきた。

同僚と話していたときに、私はこう言ったよ。

メディアの人間として彼の移籍を気にすべきではないね。いや、オレはするよ。オレが彼を育てたんだから。

私たちが従事すべきジャーナリズムの姿ではないけれど、ためらうことはない。あの子は私のお気に入りだ。

彼が自分の感情や人生、子供たちのことを話してくれたのは良い思い出。もちろん、うつ病のことも。

今回はソーシャルメディアや友人との会話を通して、あのどうしようもない感情を一般のファンと同じように理解した。

あれが彼の普通。

私が記事で取り上げたアスリートたちは実際より大きく見られすぎだ。彼らのスキルに感心させられ、強い存在であると伝わる。

そうではないのだ、DeMar は。

勘違いしないでほしい。彼のバスケットボールスキルはすばらしい。見慣れてしまって彼の良さに気付いていないファンもいるかもしれない。本当に優秀なバスケットボール選手だ。欠点もあった?もちろん。でも、信じてほしい。時が経つにつれて思い出すのは、彼ができなかったことではなく、いかにすばらしかったのかということ。

今回のように彼が人々を困惑させるのはいつものことだ。私も困惑した。ラプターズの顔であり、国民に愛されることを、彼はトロント出身であるかのように心から楽しんでいた。

キャリアをここで終えたいと、彼はいつも語っていた。心の底からそう願って。社交辞令ではない。信じてほしい。彼は15年、17年、20年、ここでプレイしたかったんだ。トロントとカナダのバスケットボール史に名を刻むべく。

信じてほしい。彼は傷心し、悲しんでいる。それが彼の親しみやすさなのだ。

この9年間を振り返ってトップ5の思い出を挙げるのは難しい。多くの出来事がそれぞれつながっている。

試合以外のことから思い出深い出来事をひとつ。

私が練習施設の片隅から、自身のうつ病について打ち明ける彼の様子を見守っていたときのこと。衝撃的なニュースであることを彼はわかっていた。私もそうだ。打ち明ける必要があることも同時にわかっていた。

翌日か、数日後だったかもしれない。この話題が公に広まり、彼はロッカーの前でいつものように試合後の囲み取材に応じた。私は離れた場所から見ていた。仕事のためではないけれど、私もそのニュースを書いたので責任がある。もし彼が怒り始めたり、精神的に参ってしまうようなら、私に目を向けてほしかった。彼が望むことを言えるように。

大股で歩いて近づいてきた彼はほかの記者から聞こえない場所で笑いながら『 Doug?おまえ最高だな、本当に』と声をかけてくれた。

プレイオフ期間中に私が入院していたとき、メールをくれたことも思い出す。『元気に戻ってこいよ。寂しいな』『オレたちは勝ちに行く。心配するなってみんなに伝えてやれよ』って。

いつものやりとり。最高の。彼らしい。

寂しくなるよ。

私たちが嫌になるまで、今回のトレードについてバスケットボール的な利点を議論することはできる。来季の内容がどうであろうと、ラプターズにとって良い決断だった。でも、プロスポーツが残酷なビジネスであるという事実については議論できない。感傷的になっても何も生まれない場所だから。忠誠が報われないときもある。

DeMar は生涯ラプターズであることを望んだ。GMの Masai はそう考えず、彼が思うベストな決断を下した。最初に思いついた方法が最善であると信じてみても、世界は必ずしもそうとは限らない。

ヘッドコーチの Dwane が解雇されたときに私が言ったことをもう一度。

スポーツはすばらしくも、つらいときもある。悪いことが良い人間にふりかかる。とても残念な現実だ。私たちに求められるのは良い思い出を永遠に手放さないこと。彼らはそれだけの価値がある。


追記:DeRozan 本人が Instagram に投稿した感謝のメッセージを翻訳。

この気持ちは言葉で表現できない。最初の出会いは僕が19歳のとき。すぐに受け入れ、包み込んでくれた。この9年間で与えてもらった愛と情熱に感謝している。僕が望むのは感謝の気持ちを何度も繰り返し伝えること。ありがとう、トロント。ありがとう、カナダ。



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